ここで言う「和声法」はポピュラー音楽やジャズ音楽で使われるコード的概念の和声ではなく、クラシック音楽で使われる和音の進行や各声部の連結などの理論になります。なんのこっちゃわからないかも知れませんが簡単に言うと「ルールを作って横の流れも考えながら和音を綺麗に聞かせる」方法論です。
現代音楽で使用される方法としてはハモリやバイオリンなどの弦セクションを曲に入れる時に使います。個人的には主にコードヴォイシングのオープンコードでコード構成音を配置する時に使用しています。
この「機能和声」とはそれぞれの和音には根音(コードルート)と調(キー)の主音との間に一定の役割り・機能(トニック・サフドミナント・ドミナント)があると言う考えです。これはポピュラー音楽理論とほぼ同じなのです。
しかしダイアトニックコードの3つ目のコード(key=CならEm)をドミナントととらえたりとポピュラー音楽理論とは少し違う部分もあります。詳しく代理コードの記事をご覧下さい。
↓代理コードの記事
声部
和声法では4声(ソプラノ、アルト、テナー、バス)で曲を作る術を学びます。この4声とはどこからきたかというと合唱音楽からきています。合唱音楽でも基本的な混声四部合唱で考えがえましょうって考えです。
さて合唱となると人それぞれ声には音域があります。ですので各パートここからここまでと言う一般的な音域を定義しその中で作成します。
和声法の最大の目的は和音を綺麗に響かせることです。ですので隣合うパート同士の距離があまり開きすぎると上手く響きません。なので隣合うパート同士の距離の範囲を指定します。
また2つパートが同時に進行する時、その進行方向によって名称があります。
①並行進行
2つのパートが同じ方向に進行する事を「並行進行」と言います。進行後の音がやや強く感じます。
②反行進行
2つのパートが反対方向に進行する事を「反行進行」と言います。それぞれが反対に動く事で2パートの独立性が高まり、安定した響きを得られます。現代音楽で言えばメロディーとベースの様な進行ですね。
③斜行進行
2つのパートの一方が音を保留(前と同じ音に進行)し、もう一方が上下に進行する事を「斜行進行」と言います。主に下記の「禁則」を防ぐ為に使われる事が多く、こちらも安定した響きを得られます。
○声部まとめ
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①機能和声法における各パートの音域定義
- ソプラノ→C4~A5
- アルト→G3~D5
- テナー→C3~A4
- バス→F2~D4
- ソプラノ:アルト→8度まで(限界10度)
- アルト:テノール→8度まで(限界10度)
- テナー:バス→12度まで(限界14度)
- 並行→上下どちらか同じ方向に進行
- 反行→反対方向に進行
- 斜行→一方が保留し、もう一方が上下どちらかに進行
③2パート間の同時進行する時のパターン
限定進行と例外進行
この和音のこの音は原則、次の音に進行することが決まっているモノがありこれを限定進行音と言います。この限定進行音が原則通り進行することを限定進行と言います。例えばダイアトニックコードの5番目のコード。key=CならG。
「G」の3度音(シ)は導音なので原則として短2度上のドの音へいかなければなりません。Ⅴ7の7度音(G7ならファ)は下に行こうとする働きがあります。長短2度下へ進行するという原則があります。また短2度下に進行すれば長調、長2度進行すれば短調の可能性が高いことがわかります。
○主な限定進行の種類
- 導音→2度上へ
- 7度音→2度下へ
- 9度音→2度下へ
- 付加4度音→2度上へ※
- 付加6度音→2度上へ※
(例)key=C IV+6→F(ファ ラ ド)+6度音(レ)
Beeミュージックスクール
例外として限定進行音にいかなく良い場合があります。これを例外進行と言います。いくつか例を上げてみます。
①ダイアトニックのⅤ7以外の7度音をもつコード
(key=C:CM7 Dm7 Em7 FM7 Am7 B♭m7(♭5))に進行する場合はコードの7度音は前の音を保留する。この事を「予備」と言う。Ⅴ7→ⅠM7も同様でV7の導音は短2度上には行かず保留となります。導音よりも予備が優先となる。
②Ⅴ7の7度音がコードのトップノートであり次にⅠの第1転回形(ルートが3度音になる)に進行する時、限定進行だとⅤ7の7度音が2度下に行くことになるがそうするとコードのルートとトップノートが同じコードの3度音になってしまい、和音が強調されてしまう。
この場、V7のコードを転回しコードの7度音を内声部に持ってくる。7度音が内声部にある時に限り、7度音は上に行くことが出来ます。
③同様にIV6のコードの6度音がコードのトップノートであり、そこからⅠの第1転回形へ進行する場合、付加6音は上に2度進行する限定進行だが同じくⅠの3度音に進行してしまう。この場はIV6の6度音は4度上に進行させる事が出来ます。
○限定進行と例外進行まとめ
- 限定進行→限定進行音が原則通り進行する進行の事
- 例外進行→限定進行音が原則通り進行すると不具合(音がオクターブで強調される等)が生じる場合、例外的に進行する事
禁則
声部の動き方によっては和音の響きが悪くなる進行があります。これを「禁則」と言い、その音へ進行する事が禁止されています。この禁則には主に2つあります。
①連続(平行)進行
2つ声部が連続して完全1、5、8度に進行するもの。但し一方が保留音(斜行進行)である場合や減5度への進行はOK。
②隠伏、直行(並達)進行
外声部(ソプラノとバス)の並達音(並行進行で達した音)が1、5、8度に進行するもの。内声部での並達音はOK。またソプラノが順次進行してる場合は禁則にはなりません。
例外が他にもあり並達1度は完全終始進行(Ⅴ→Ⅰ)でのテノールとバスは禁則とはなりません。また並達8度は内声部であってもコードの3度音へ進行するモノは禁則となります。
○禁則まとめ
- 連続進行
- 2声間の完全1、5、8度の連続進行は禁止
- 例外として斜行進行や減5度進行はOK
- 並達進行
- 禁則になるのは外声部(ソプラノとバス)のみ
- ソプラノが順次進行してる場合は禁則にはならない
- 完全終止する場合のみテノールとバスの1度の並達進行はOK
- 内声であっても他の声部とコードの3度音に並達8度に進行する場合は禁止
まとめ
和声法は上記の理論的なことは独学でも十分、学べるのですが問題はこの理論を使って実践できるかです。本来、誰かに師事して実践的に学ぶことで身になってくモノです。なので本格的にクラシックの作曲がしたいのであれば和声法のわかる方に実践を通して教わりるべきでしょう。
しかし限定進行や禁則がある以上のセオリー通りになり自由度は失われます。ポピュラー音楽などでは和声法は頭の片隅に入れてあまり縛られずに作曲する方が個人的にはいい様に思います。但し和声法を使った方が和音が綺麗に響くのは確かです。
自分の使い方としてはストリングスアンサンブルなどを作曲する時に「なんか流れ的にこの和音の響きは気持ち悪いな」と思ったら和声法を使って修正しています。これくらいですかね…。ただ覚えておいて損はないのですので作曲の知識として覚えておきましょう。
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