コードの押さえ方又は鳴らし方(ヴォイシング)は1つではありません。曲や状況によって変えていかなければなりません。主にオーケストラやビックバンドでは楽器の特性に合わせたコードの鳴らし方、バンドでは他の楽器との干渉や音抜けを考えた押さえ方などをします。ジャンルによって編成によっても変わってきます。
今回はそのコードの押さえ方、鳴らし方についての記事になります。あまりヴォイシング意識して弾いたり作曲したりしてる方は少ない様ですが、特に作曲や鍵盤には非常に重要な要素だと思います。
コードヴォイシングの種類
- クローズドヴォイシング
- オープンヴォイシング
- クラスターヴォイシング
1.クローズドヴォイシング
クローズドヴォイシングとは1オクターブ以内にコードの構成音を収めるヴォイシングです。普通、コードと言われるとこのクローズドヴォイシングを思い浮かべるでしょう。
片手でコードが弾けるので鍵盤ならもう片方の手で別のことが出来ます。特に鍵盤で弾くとコード感が強くでて音のアタックが強く、速いコードバッキングなどには向いてるヴォイシングです。デメリットとしてある帯域に固まって音が鳴る事になるので楽器数の多い編成などでは少し弾き方(オクターブや転回)を考えなければなりません。
またメジャーセブンの第一転回系はコードのトップノートが半音でぶつかる事になるのであまり使いません。マイナーセブンも第一転回系はトップノートとコードの構成音が全音で隣合うので使うのを嫌う人もいます。(音が濁る為)
○クローズドヴォイシングまとめ
- 1オクターブ以内にコードの構成音を収めるヴォイシング
- メリット
- 片手で弾ける
(もう片方で別のことが出来る) - 音のアタック、コード感が強い
- コードチェンジでの動きが少なく、早弾きにむいている
- 片手で弾ける
- デメリット
- ある帯域にその音がよってしまう
- 楽器数が多い編成では弾き方を考えなければならない
2.オープンヴォイシング
オープンヴォイシングは1オクターブ以上に渡ってコードの構成音を配置するヴォイシングです。鍵盤なら余程、指が長い場合でない限り両手で弾くコードになります。
クローズドヴォイシングと比べ音に広がりが出るのが特徴的です。音の帯域が広くなる事でそれぞれの楽器の音抜けが良くなる効果があります。逆にオープンヴォイシングで弾いている楽器はクローズドヴォイシングに比べるとアタック感が少なく、テンポの速い曲などにも向いていないなヴォイシングになります。
生のストリングス編成や合唱などでは人によって、楽器よってピッチが違い、コードの構成音が近いとコードが綺麗に響かないのでオープンヴォイシングで弾く事がほとんどです。鍵盤としてはストリングスやPad系の立ち上がりが遅い音を白玉で弾く時に各楽器の音抜け良くする為、オープンヴォイシングにしたりします。
オープンヴォイシングにも転回の仕方があり、コード構成音の上から2つ目の音を1オクターブ下げる「ドロップ2」、コード構成音の上から3つ目の音を1オクターブ下げる「ドロップ3」、コード構成音の上から2つ目と4つ目の音を1オクターブ下げる「ドロップ2&4」があります(これをドロップヴォイシングと言う)
またドロップヴォイシングの配置の仕方とは違い、コード構成音の2音間(2つの和音)が離れている「スプレッドヴォイシング」があります。これはよくジャズピアノのバッキングで使われるヴォイシングです。左手がroot+7(6)度かroot+3度、右手がテンションノートを含めたコード構成音となります。ジャズのヴォイシングについてはまた別の記事でまとめます。
○オープンヴォイシングまとめ
- 1オクターブ以上に渡ってコードの構成音を配置するヴォイシング
- メリット
- 音に広がり出る
- クローズドヴォイシングと比べると各楽器の音抜けが良くなる
- ピッチ違いによる不協和音が起こりにくい
- デメリット
- 両手が塞がってしまう
- クローズドヴォイシングと比べるとアタック感が少ない
- 早弾きには向いていない
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3.クラスターヴォイシング
クラスターヴォイシングはコードの構成音をワザと密接する様(音の塊の様に)に配置するヴォイシングです。主にテンションノートを密接させて配置するヴォイシングなのでジャズやプログレなどで使われるヴォイシングになります。
音が密接している分、クローズヴォイシングよりもより強烈な印象を与えます。ジャズピアノのバッキングやビックバンドのブラスセクションなどで使用されます。またモード上で音をぶつける様に和音を作り弾いたりします。個人的にはジャズではピアノやブラスなどの音色で弾き、プログレでは飛び道具的な使い方をしますね。
そもそもクラシックにあった「トーンクラスター」という手のひらや甲、腕などを使って鍵盤を叩く奏法があったのですが、あまりにも音楽的ではなくそのままでは応用がききませんでした。これを適当に叩くのではなく、コードに当てはめてワザと半音、全音をぶつける事によりトーンクラスターの良さを引き出したヴォイシングです。
飛び道具的なな使い方としてディミニッシュコードが鳴ってる時は理論上、全ての音が使える(ディミニッシュスケール+コンビネーションディミニッシュスケール)ので適当に音がぶつかる様に和音を作り弾いたりします。どちらかというとこの場合はクラスターヴォイシングと言うよりはトーンクラスター奏法ですね。
○クラスターヴォイシングまとめ
- コードの構成音をワザと密接する様(音の塊の様に)に配置するヴォイシング
- メリット
- 強烈な印象を与える事が出来る
- 使い方によっては新しいサウンドが出来る
- デメリット
- ジャズ以外の使い所が難しい
- モード上でクラスター和音を作る時は考えて作らないと音楽的でなくなる
まとめ
ヴォイシングは作曲や演奏面では非常に重要です。音楽ジャンルによって、鍵盤で言えば使う音色によってもコードのヴォイシングが違ってきます。
またコード音をそのまま弾く必要もありません。例えばジャズなどではコードルートはベースに任せてしまってベース音を抜いたコードを弾きます。
(CM9=ベース音C+コード音Em7)
ジャズなどはベースが動くのでroot音があるとぶつかったり重くなってしまいます(音が近くなる為)。逆にロックなどはワザとコードのroot音を左手で弾いてベースとユニゾンして低音を強調するなどコード1つとっても音楽は奥が深いですね。