ずっと疑問だったのですが、オーディオプレーヤーやオーディオ再生アプリには必ずって言っていいほどEQが付いています。個人的には「これって必要?」って思うんですよね。何故ならば1曲を作る段階で結構、EQっていじっているからです。そもそも音楽をかじっている人以外はどういじって良いのかわからない訳だし…。「Bass Boost」とかならわかるんですけどね。
今回は1曲が出来る成り立ちを踏まえながら、本当にEQが必要なのか考えて行きたいと思います。
EQ(イコライザー)とは
EQとはある周波数帯域の音量を上げ下げする装置です。グラフィックEQとパラメトリックEQの2つありますが、ほとんどのオーディオに付いているEQはグラフィックEQになります。
○グラフィックEQ
BEHRINGER FBQ800 MINIFBQ
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グラフィックEQは周波数帯域を一定の割合で分けてそれぞれの帯域の音量を変化させるEQです。ほとんどのグラフィックEQは帯域毎にスライダー(またはスライダー表示)が付いているので視覚に何処をいじったのかわかりやすい特徴があります。曲全体を調整する時に使う事が多いです。
○パラメトリックEQ
KLARK TEKNIK EQP-KT
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グラフィックEQと違い周波数帯域の割り当てがないので、自由に帯域を選択出来るのが特徴です。帯域が選択されていない分、より細かな調整ができます。主に楽器の音作りで使われる事が多いです。
1曲が出来るまで
- 録音
- ミックスダウン
- マスタリング
1.録音
楽器を弾いたり打ち込んだりして曲を録音していくのですが、奏者側で既にEQをいじっている場合があります。音を作る時に既にいじって事もあるし、スタジオ録音などではエンジニア側で録音の段階から不要な帯域はEQを使ってカットしてる事もあります。
オールインワンシンセの生楽器系のサンプリング音は聞こえを良くする為に大体EQで帯域をいじっています。録音時はエフェクトを切れって良く言われますがEQは切らない様にしましょう。このEQは聞こえを良くするだけでなく、音に特徴を持たせる為にEQを入れている場合がほとんどです。(例えばバイオリンの弦の擦れる音を強調したりなど)
もちろんEQをかけないで録音し、終わってからでも録音側の機材で調整出来ますが自分がエンジニアの役割をしない場合のスタジオ録音時はやめましょう。奏者側は自分の出す音に関しては責任を持つべきだと思います。ちゃんと音を作って録音に臨みましょう。無論、電子音でも…。
録音時のエフェクトに関しては過去記事にも書いてるので合わせてご覧下さい。
また本当の生楽器は録音時にEQで調整するか、次のミックスダウン時に音を調整します。
2.ミックスダウン
ミックスダウンとは録音した音をまとめる作業です。各音の音量バランス、定位(音の位置)、音質などをまとめて最終的に2チャンネル(ステレオ)にまとめます。各音のトラックから最終的に2チャンネルにまとめるのでトラックダウンとも言います。
ミックスダウンでのEQの役割は主に生楽器の音作りやそれぞれの楽器が出している音の帯域が被っているので、それぞれが聞こえやすくする為に被っている帯域をカットしたり、音に特徴を持たせ目立ちやすくしたりします。なので1曲を作る中でこの調整がかなり時間掛かります。
スタジオ録音であればエンジニアがやってくれますが、宅レコでは自分でやらなくてはなりません。個人でミックスダウンをやるとやってしまいがちなのが、各音を上げすぎてなかなか調整出来なくなる事です。基本ミックスダウンは引き算で考えます。基準の音(スネアドラム等)を決めて、その音が基準の音に対して大きいのか小さいのかで調整していきます。
また音量下げる事で奥に引っ込んでいき音量上げることで手前に出てきます。倍音を多く含んだ音は音量を下げただけでは引っ込まない事もあるので「ディレイ」などのエフェクトを掛けてやることで奥に引っ込ませたりします。
っと色々と書きましたがこの辺はまた別記事で紹介したいと思います。見てわかるかと思いますがミックスダウンは知識やテクニックが必要だったりします。なので「レコーディングエンジニア」という仕事があるのです。
楽器の事なら石橋楽器!
3.マスタリング
音楽をやってない人にはあまり聞き慣れない言葉かと思いますが、ミックスダウンした曲の最終調整をするのがマスタリングです。何をやるのかと言うと、録音で入ってしまったノイズの除去や左右の広がりの調整、音圧を上げたりCDアルバムなどの曲と曲の間の無音部分の作成など…。
またマスタリングでのEQの役割ですが、ミックスダウンされた曲が特定の周波数帯域が出過ぎ無い様に、または特定の周波数帯域が小さければEQで上げてバランスを取ります。なぜバランスを取るかと言うとどの再生媒体(オーディオプレーヤー等)でも同じ様に聞こえる様にする為です。なのでマスタリングスタジオには高価なスピーカーの他にも安いオーディオセットなどが置いてあります。
マスタリングは音圧を上げる作業と思っている方が多いと思いますが、他にも上記の様に細かな調整をしています。また小さいレコーディングスタジオなんかだとミックスダウンとマスタリングを一緒にやってしまう所も多い様です。
EQ必要?
上記の過程を踏んで自分達の手元に音楽が届きます。どうですか?各工程で結構EQいじってるんですよね…。なので楽器本来の音で自分達の手元に届くのはまず無いです。プロの手で加工して完成されたモノを更に加工するのはどうなんですかね?
では逆に完成されたモノにEQが必要な時とはどういう状況でしょうか?自分が思うには再生媒体が貧弱な場合だと思います。「このスピーカーは低音出ないだよな〜」と思った時にプレーヤーに付いているEQをいじってやるのが正しい使い方だと思います。
各スピーカーやイヤホンなどには周波数特性というものがあり、聞きやすくする為にあるいはその商品に特徴を付ける為、ある帯域がよく出る様に作られていたりします。なのでそれを調整したりする為にプレーヤー側にEQが付いているのではないかと思います。
まとめ
オーディオプレーヤーに付いているEQは自分が持っている再生媒体の弱点を補う為にあると自分は考えます。ですがやはり楽器の知識などがなければざっくりとしたEQの操作しか出来ないんですよね…。それでもEQでいじって自分の好みの音に加工して聞くのは人それぞれですので良いかとは思います。
しかしラーメン屋のラーメンの様に最初はフラットな状態で聞いて欲しい。上記でも書いたと通り、マスタリングでどの様な再生媒体でも同じに聞こえる様に調整しています。その1曲には作曲者や奏者、エンジニアの想いが詰まっています。その想いを最初はだけは加工せずに聞いて欲しいです。
ちょっと最後は熱くなってしまいましたが今回はこの辺で…。
Soundhouse