ピアニストとキーボーディストでは根本的に違います。自分はキーボーディストなのですが以前、仕事で「生ピアノを弾いてくれ」って依頼がありました。バンドの中でコード弾きだけならまだしも、結構がっつり生ピアノメインの曲だったのでお断りしました。
同じ鍵盤楽器なんだから弾けるだろうという考えで依頼されたとは思うのですが、ピアニストにはピアニストのキーボーディストにはキーボーディストの技術や知識があります。そうでなければそれぞれ職業としてなりまちませんよね…。今回はそんなピアニストとキーボーディストの違いを記事にしたいと思います。
楽器の違い
生ピアノはとにかく鍵盤が重いです。デジタルピアノや一部のシンセにもピアノ鍵盤を採用しているモノがありますが、ちょっと比較にならないくらい重いですね。生ピアノはハンマーで弦を叩いて音を鳴らす楽器ですのでモロに指の力が影響されます。自分もそうですがずっとデジタルピアノやシンセで弾いてる人は鍵盤を重く感じて生ピアノでの強弱や早弾きは厳しいです。
生ピアノにはペダルが3つあります。これは1番右側がサスティーンペダルで、踏んでいると音が伸びるペダルです。これはシンセでも別売りのペダルを買えば使えます。1番左側はソフトペダル。これは踏みながら弾くと音の響きを弱める効果があります。またグランドピアノでは弦の叩く場所をずらすことで弱くし、アップライトピアノではハンマーを弦の近くにずらし叩く距離を短くすることで弱くします。これもシンセでペダルをつなげば表現は出来ます。
そして真ん中のペダルですがグランドピアノではソステヌートペダルといい、ペダルを踏んだ時点で押してる鍵盤の音が伸びます。アップライトピアノではマフラーペダルといい弦とハンマーの間にフェルトが入り音量が小さくなります。これは自宅などで大きな音で練習出来ない場合などに使用します。
ピアニストはペダルを上手く使って表現するのでキーボーディストとは表現の仕方が変わってきます。そもそもキーボーディストはサスティーンペダルしかほぼ使用しないですからね…。
また生ピアノには調律があります。調律は平均律であれば高音に行くほどピッチを高くし、低音へ行くほどピッチを低くします。比べてシンセは機械的にピッチを割り振っているのでそもそも生ピアノと響きが変わってきます。よくピアノの曲をCDで流しながらデジタルピアノやシンセで練習する時、音が濁ったりズレているなと感じた事はないでしょうか?それは生ピアノの調律によってピッチが微妙にズレているから起こるのです。
なぜ高音、低音のピッチをズラすのかですが、その方が人間の耳にはよく響くからだそうでオーケストラなどでもファーストバイオリンなどはそもそもHz数を442Hzにして調律してたりします。
○楽器の違いまとめ
- 鍵盤の重さが違う為、シンセなど弾いている人などには強弱や早弾きが難しい
- 生ピアノにはペダルでの表現の仕方がある
- 生ピアノは高音、低音のピッチが違いシンセなどの機械的に分けたピッチのモノと比べると響きが豊かに聞こえる
サウンドハウス
知識の違い
基本的にピアニストは生ピアノしか弾きません。他の鍵盤楽器を弾いたとしてもピアノに準ずるモノになるかと思います(デジタルピアノなど)
なのでピアニストはピアノの以外の鍵盤楽器の知識はあまりありません。
それに比べキーボーディストは色々な鍵盤楽器を弾きます。エレピやオルガン、シンセ、もちろんピアノも弾きます(技術は別にして…)
なのでキーボーディストは様々な鍵盤楽器の知識が必要になってきます。
例えばちゃんとしたエレピ(Fender Rhodesなど)は打鍵後の鍵盤の戻りが遅く、早弾きには向かない楽器です。オルガンは沈み込む鍵盤(ウォーターフォール鍵盤)となっておりグリッサンドがしやすく、また鍵盤の打鍵の深さによって上の倍音から鳴っていく楽器です。
↓ちゃんとしたエレピ(Fender Rhodes)
またオールインワンシンセなど色々な音が出せる鍵盤楽器はその楽器の奏法を真似て弾いたりします。クラビネットやパーカッションが入っているオルガンは両手を使って打楽器の様に弾いたり、サックスなど音の立ち上がり遅い楽器はピッチベンドを使ってピッチを下げた状態から弾いたりします。なので鍵盤楽器に限らず他の楽器の知識も必要になってきます。
その他にもアンプの知識やシンセなどで音を作る知識、エフェクターの知識など様々な知識が必要になってきます。そういった意味では知識がないと弾けないのがキーボーディストです。ピアニストと比べると覚える事は多いでしょう。
○知識の違いまとめ
- ピアニストは基本的に生ピアノしか弾かないので、他の鍵盤楽器の知識はあまりない
- キーボーディストは様々な鍵盤楽器や様々な楽器の音を使って弾くので楽器の知識は必要
- 弾く以外にも音を作るなどの知識も必要なのでキーボーディストは知識がないと弾けない楽器
考え方の違い
これは以前に書いた「クラシックとジャズの違い」にほぼ同じです。クラシックピアノ出身の方がジャズピアニストに転向するのはよくあるので一概には言えませんが、相対的にピアニストはクラシックよりの考え方です。
↓「クラシックとジャズの違い」の記事
クラシックは譜面ありきの音楽なので譜面通りに弾くことが優先されます。一方、キーボーディストはたとえクラシック譜面をもらったとしてもこの曲をどの様に弾くか考えます。これはどちらにも良い面、悪い面があります。
クラシックの考えであれば譜面さえ渡せば強弱を含め譜面通りに完璧に弾いてくれます。逆に言えば譜面以上の事は出来ない方が多いです。例えば自由に弾くパート(ソロパート)などは弾けない方が多いですね…。
ジャズ(ポピュラー)の考えであれば曲にアレンジを加え譜面以上の演奏ができる可能があります。逆に譜面通りに弾くのは苦手です。これは脳の使い方がクラシックとジャズでは違うので仕方ないものだと思います。
考え方を切り替えてやればいいじゃないと思うかも知れませんが、やはりずっと同じ事をやってるとなかなか切り替えられないんですよね…。
○考え方の違いまとめ
- ピアニストはクラシックの考え方
- キーボーディストはジャズ(ポピュラー)の考え方
- (相対的に)ピアニストは譜面に強く、アドリブに弱い
- (相対的に)キーボーディストはアドリブに強く、譜面に弱い
まとめ
キーボーディストの立場から言わせてもらうとやはりその楽器を専門で演奏してる方にはなかなか敵わないです。ピアノに限って言えばピアニストに弾いてもらった方が良いモノが出来ると思っています。なんせその楽器を熟知した専門家な訳ですから…。
ただ今、考えると仕事で依頼されたんだったらしっかりと練習して受けるべきだったと思います。どういった意図で自分に依頼してきたかわからないし、音楽の仕事って断るとなくなっていきますからね(涙)
理想なのは使う楽器が違うだけのことにするのが1番良いですね。ちゃんと生ピアノでも満足のいく演奏が出来る様にしておくのが1番かと思います。なので今、自分は譜面通りに弾けるようにクラシックの曲を練習しています。
ピアニストとキーボーディストでは大きな違いはあれど、その違いは努力次第で埋めることが出来ます。キーボーディストを目指してる方は自分の様な失敗をしない様に若い内から両方出来るように努力しましょう。
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